虎之助の映画記

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映画「図書館戦争 OVER THE SEA - 図書隊を海外に派兵せよ」

 今日のニュースによれば、岡田准一さん、次回作に意欲満々とのこと。次回作ができるといいですね。

 さて、本稿は、図書館戦争の続編への提案。タイトルは、「図書館戦争 OVER THE SEA - 図書隊を海外に派兵せよ」です。

 図書館戦争の最大の欠陥は、「国内でメディア良化隊と図書隊という2つの公権力が戦争する」という設定です。2つの公権力が、法律に基づいて秩序だって"戦争"をするので、緊張感が全くなく、"戦争ごっこ"になってしまうのです(これについては、劇場で観た映画(2015)に書きましたが、本記事の末尾に移動します)。

 基礎がしっかりしていないので、色々なところに綻びが出てしまっています。支持層に杭が到達していないマンションといったところでしょうか。折角の素敵な外装・内装の立派なマンションなのに、勿体無いです。

 通常の公権力との戦いは、次のような設定をします。

  1. 公権力を正義(主人公)とする場合: 警察や軍など公権力と、テロ集団など非合法組織が戦う。
  2. 非合法組織を正義(主人公)とする場合:独裁政権などの公権力に対して、レジスタンスとして非合法組織が戦う。

つまり、合法組織と非合法組織の戦いです。

 検閲を舞台設定としている最近の作品としては、下ネタという概念が存在しない退屈な世界があります。「公序良俗健全育成法」によるメディア検閲・思想統制に対するレジスタンス活動を描くギャグ作品です。2番目のケースですね。検閲をテーマにすると、検閲する側を主人公とする娯楽作品を作るのは、そもそも難しいですかね。シリアスな作品なら可能性あると思うけど。

 図書館戦争の場合、絶対悪の国家機関「メディア良化隊」に対するレジスタンス戦争のようで2番目のケースに近いように見えますが、図書隊自体は、「メディア良化隊」と同じ統治下にある公権力です。通常、同じ統治下にあるならば、統治メカニズムが、どちらか一方を選択し、どちらか一方を排除します。統治メカニズムは、独裁政権の場合もあるでしょうし、民主政権、戦前・戦中の日本の政治機構などいろいろなケースがあるでしょう。
 図書館戦争の検閲は、戦前・戦中の検閲のイメージでしょうから、普通に考えれば、図書隊は非合法組織となりレジスタンスになるはずです。ところが、そのレジスタンスが、法律に基づく合法な軍隊組織なので、"戦争ごっこ"を繰り広げることになります(実写版ではその比重を大きくして真面目に描いてしまっているので、さらに「???」となってしまいます)。

 この無理な設定を解決する方法は、簡単です。同じ統治下に置かなければよいのです。現在でも、検閲を行ない、焚書を行なっている国(あるいは、統治機構)は存在します。例えば、もっとも過激な例は、イスラム国でしょう。イスラム国は、支配地域に対してイスラム教原理主義に基づく統治を行なっています。この統治下では、彼らの考えるイスラム主義に反する図書は、検閲・焚書され、図書の自由はありません。他にも北朝鮮などモデルとなる国は多数あるでしょう。

 このような図書の自由のない世界に対して、図書の自由を守るために図書隊が戦う、という設定であれば、少なくとも2つの公権力の戦争という致命的な欠点は解消されます。平和な日本での戦争ごっこという違和感のある状況もなくなり、よりシリアスな戦争として描けます。つまり、舞台を国外に設定すること、すなわち「図書隊を海外派兵せよ」ということです。例えば、図書隊は、"国連図書保全活動"への国際貢献として日本から派兵され、某国において"国境なき図書団"が運営する図書館の防衛にあたる、といったような設定です。ラブコメあり、激泣きあり、アクションあり、社会性ありの極上のエンターテインメントができるかもしれません。

 原作は読んでいませんが、今回の「図書館戦争 THE LAST MISSION」に相当する部分でアニメは終了しているので、続編ではオリジナルストーリーで展開できますよね?「図書館戦争 OVER THE SEA」如何でしょうか (To: 製作スタッフの皆さん)

(P.S.)
 岡田さん、早くハリウッドや中国の大作映画などでメジャーデビューしてくださいね。アクションのキレは、キアヌ・リーブスジェイソン・ステイサムスティーヴン・セガールの上をいっています。欧米系のアクションスターで岡田さん以上の人いますかね?(欧米人は、基本的に体が大きいので、東洋人に比べるとキレが悪いのよね) ジャッキー・チェンやカンフー系のすごい連中と十分張り合えると思います。チャンスがあれば、是非、チャレンジしてみてください(世界的名監督、往年の黒沢明みたいな人が日本にいれば、日本で活躍して欲しいけど...)。
 榮倉奈々さん、いつみても可愛いです。

(蛇足)
 さて、本当に次回作があるとすれば、2-3年後。ちょうど、その頃、自衛隊イスラム国掃討のため中東に派兵されると予想します(*)。安全保障関連法案が成立し、これから自衛隊は海外で血を流すこと("Shed blood")になるわけですが、違憲論ばかりでは若い自衛隊員も胸を張って死んでいくことはできないでしょう。図書隊の海外派兵は、現実世界での海外派兵への応援歌となります。

 *: アメリカは、父ブッシュ以来、共和党政権になると中東で戦争をして、日本がそれに引きずり出されるという構図が続いています。次は共和党政権でしょうから、ちょうどその頃、イスラム国掃討作戦に日本も参加せよと要請(命令)されるわけです。日本は憲法解釈の変更により海外派兵できるようになりましたので、現政権なら喜んで戦争に参加するでしょうし、そうでない政権でも単純には断れません。

図書館戦争 LOVE&WAR 1 (花とゆめコミックス)

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2015/10/21

[映画レビュー]
 図書館戦争-THE LAST MISSION-(出演:岡田准一,榮倉奈々, 2015)
有川浩原作の小説「図書館戦争」の実写化。メディア検閲を行うメディア良化隊と本の自由を守る図書館隊との"戦争"を描く。
 感想は、一言で言えば、乗れませんでした。物語の前提条件である「メディア良化隊と図書館隊の戦争」という状況設定が受け入れられなかったことが原因。前提条件は、できるだけ受けれるようにして映画を観ていますが、"戦争"ではなく、"戦争ごっこ"にしか見えないのです。シナリオ・演出・演技ともに完成度は比較的高いと思いますが、"戦争"を真面目に描けば描くほど、緊張感のない"戦争ごっこ"の設定との遊離が大きくなってしまい、違和感がきつくなります。緊張感のなさを感じるのは、次の点。
(1)「メディア良化隊」「図書館隊」ともに、法的根拠に基づく公権力であること。
(2)「戦争」は、法律に基づき、秩序だって行われていること(図書館内でのみ戦闘行為が行われるなど)。
(3) 普通の人は普通に生活し、隊員も勤務時間以外は普通に生活していること。
 同じ公権力の中の対立なのだから、平和的に解決すれば?と思ってしまい、軍隊の必要性をそもそも感じません。それを受け入れたとしても、図書館という箱庭の中の"戦争"に過ぎず、勤務を終えたら、図書館隊の隊員と良化隊の隊員がデートしていても、全然違和感がないという状況。要するに箱庭の中での戦争ごっこ。戦争ごっこなので、(実弾は使わずに) 勝てば本をゲットして、負ければロストするというサバイバルゲーム的な設定の方がむしろ違和感がないかな。漫画は1巻だけ読みましたが、図書館隊での恋愛漫画と思って、それ以上は読んでいません。図書館戦争シリーズはヒットしているようなので、原作やアニメなどはきっと面白いのでしょうね。P.S. 岡田准一、無駄にかっこ良い。(2015/10/18)

(追記) アニメ版もみました。軍隊での王子様の教官と主人公のラブコメです。軍隊という設定なので、とりあえず、敵(メディア良化隊)を出してきて戦っているということでしょうか。緻密な背景設定があるというわけではなさそうです。このレベルのラブコメで、なんでヒットしているだろう???(原作読めば分かるのかなぁ...)

 甘音さんのブログ「直列☆ちょこれいつ」も、図書館戦争の設定の稚拙さを、「気持ち悪さ」という表現で指摘をされています。言いたい気持ち、よく分かります。

(追記) こんな批判記事もありました。