虎之助の映画記

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実写版「進撃の巨人(前編)」

進撃の巨人

監督:樋口真嗣、原作:諌山創、出演:三浦春馬長谷川博己水原希子石原さとみ 

 

実写版「進撃の巨人(前編)」を観ました。

 映画は、ぶらっと行って上映時間が合ったものを観ていますが、この映画もそんな映画の一つです。「進撃の巨人」は、漫画・アニメともに見ていましたが、実写版の事前知識は、映画の予告編と石原さとみが頑張っているそうだということぐらい。実写版では立体機動装置のアクションと超巨人のCG映像をどのように描写するか、ということに興味がありました。作品としては、進撃人気にあやかった映画だろうと予想していましたが、その意味では期待通りの出来栄えでした(笑)。

 漫画「進撃の巨人」は長編の叙事詩なので、2時間程度の映画としてまとめるには、作品の再構成が相当に必要と思っていましたが....。実写版では説明的なシーンやメインストーリーでないエピソードが多く、ストーリーの切れが悪いです。キャラ立ちしていない登場人物の描き方も良くないのかな。それと、前編・後編で一つの映画として完成するのではなく、前編である「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」で、ひとつの映画として完結して欲しかったです。後編のためのプロットは理解できますが、後編がなければ完結しない、という印象です。

 

さて、ここからは、気になった点の指摘。ネタバレが多数あるのでご注意ください。

  • みんな髪の毛が黒くて東洋人(これは仕方ないか)。
  • (軍艦島ロケで作った?)セットは、なかなか良い。
  • 不発弾に描かれた海を見て外の世界に思いを馳せるシーンは、その後のストーリーとの関連性が不明確(漫画を知っていれば言いたいことは分かりますが...)
  • 街に巨人の群れが侵入、エレンとミカサが別れてしまい、ミカサが襲われる。このシーンは、その後のミカサとエレンの関係性を示す(かよわい存在からの変貌、ミカサのヒロインとしての位置づけ)ためのプロットでしょうが、母の死を描くべきではないか。
  • エレンの両親がいつの間にか死んでいる。「駆逐してやる」強い想いは、母の死から生まれているのではないのか?
  • シキシマとエレンのシーンで現れる「家畜」のキーワード。「駆逐してやる」の重要キーワードと被ってしまう。
  • エレンが巨人に食われたときの、胃の中での描写がエグい。胃の中で消化される様子を描く必要はなく、エレンが巨人化するためのパワーがどこから生まれるかを表現すべき。「駆逐してやる」パワーが、母の死から生まれるのであれば、母の死の情景を中心に心象風景を描けばよいと思うけど、実写版では両親はいつの間にか死んでいるんだよね。単に「死にそうだったので変身しました」というのでは、ウルトラマンの世界。
  • 芋女のサシャは魅力的なキャラクターだけど、メインストーリーには関わらないので、サシャの描写はばっさり削除したら?
  • アルミンがキャラ立ちしておらず、ほとんど存在感がない。ガジェットを作るのが好きという描写ぐらいでは、アルミンらしさは描けない。サシャ・バカ夫婦・ジャンのエピソードを削ってでも、ここには力をいれないと。それでなければ、いっそのこと、アルミンを降板。
  • エレンとヒロインのミカサの物語と設定変更しているので、むしろアルミンははじめから居ないほうがよいのかもしれない。
  • ハンジによる立体機動装置の導入が説明的。
  • クバルが、シキシマに地下に隠してある爆弾を見せるシーン。「裏切りもの」が現れることを暗示し、トラックが略奪されることのプロット。説明的。
  • 赤ん坊の巨人は、大沢祐輔の「GREEN WORLDZ」を思い出してしまった。
  • 爆弾を乗せたトラックが乗っ取られるストーリー展開がよく分からない。自爆する女兵士が運転手を押しのけるのだが、あまりにも運転手の描写が少なくて、意味不明。運転手はたぶん後編に繋がるプロットなのだろうが、あの描写で理解するのは困難。
  • そういえば、アニ・レオンハートが出てこない。もしかして、運転手?
  • ミカサのマフラーは何を象徴している?(原作読み直したら、意味わかった。うーむ)
  • 巨人変身の事情に詳しそうなハンネス(?)が巨人化したエレンをうなじから取り出す(原作は、巨人が消滅した後にエレンが残る)。これは、後編に繋げるためのプロット?
  • 続編「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN end of the world」はあっても構わないが、進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」だけでひとつの映画として成立させて欲しい。前編・後編でやっと1つの映画になるという印象。それなら、4時間映画として上映しなさいと言いたい(もっとも4時間映画なら観に行かないけどね)。
  • シキシマは、(リヴァイ兵士長+エルヴィン団長)/2?
  • 脇役でキャラ立ちしているのは、ハンジ(石原さとみ)とクバル(國村隼)、シキシマ(長谷川博己)ぐらい? サシャは可愛い芋女という意味ではキャラが立っているが、話が発散してしまう。他にも可愛い女優さんがたくさんいたような(キャラが被る)。太っちょ(役名不明)もキャラ立ちしているか。ジャンはいたの?って感じで全然記憶に残らない。
  • 映画では、脇役を含めたメインキャストは5名前後が適当。今回で言えば、エレン・ミカサ・アルミン・シキシマ・ハンジ・クバルがストーリー作りの中心で、それ以外の役は「その他大勢」という描き方をしないと、人数が多くなりすぎてよく理解できなくなってしまう。
  • 石原さとみは、ハンジ役を好演(原作のイメージを最もよく再現している。芝居がかって多少浮いている感じもあるが...)。
  • 長谷川博己(シキシマ)は、これまで優しい・弱いという印象の役が多かったと思いますが、もう一皮むけるとよかったかも。例えば、エレンが立体機動装置を使って巨人を攻撃しているときの演技は、「これまでも若い連中がやっているのは見てきたさ。まあ、死んだら死んだで、そこまでだ」的な余裕・冷酷さがもっと表れると良かったです。スポ根漫画の鬼コーチ(「巨人の星」の星一徹、「エースを狙え!」の宗方仁など)よりも、優しいのよね。愛情溢れる丹下段平(あしたのジョー)になっている...。
  • アルミンは、知的で心優しいが弱い、という原作キャラの描写がもっと欲しいところ(アルミンらしさを表す描写・演技が少ないので、三浦春馬本郷奏多とのキャラが被って見える)。もっと童顔の役者がよい?
  • 剣ホルダーは実写にすると巨大。重そう。剣ホルダーは複数の剣が収める設定をやめて、両側に一本づつでもっと軽い方がよいかも。いっそのことホルダーをなくして、光らないライトセーバー(ホルダから出すと警棒のように伸びるサーベル)にしてしまえば、よりコンパクト。
  • エンドロールは、文字が下に流れているか、カメラが壁に沿って上がっていくのか、錯視感覚。壁を上がっていた最後には、....「超大型巨人」が出てくるかと思ったら、エンブレムだった。はずれ。
  • 全体的に、悪い意味での日本映画的なジメジメ感があります。原作の世界観を残しながら、からっとしたアクション活劇にするのは難しいのでしょうかね。

 

ここからは、私の現在公開可能なストーリーの妄想。

主な設定:

  • メインキャスト:エレン・ミカサ・アルミン・ハンジ・リヴァイ・エルヴィン。シキシマ・クバルは降板、リヴァイとエルヴィンが復活。それ以外は「その他大勢」。
  • エレンの巨人に対する「駆逐してやる」強い想いは、巨人に襲われた母の死に起因する。
  • ミカサは巨人に襲われない。実写版のミカサのトラウマ・強い女兵士となって再会するストーリー展開もなし。
  • ミカサとエレンの関係は、原作を継承し、幼馴染の戦友。
  • 原作の世界観を残しながら、アクション娯楽映画として成立させる。

プロローグ:

  • 「巨人がいる世界」でエレン・ミカサ・アルミンは幼馴染として平和に暮らしている。そこに、超大型巨人によって壁が破壊され、街が巨人に襲われ、エレンの母が殺される。そこで、エレンに「駆逐してやる」という激情が生まれる(原作とほぼ同じ)。エレン・ミカサ・アルミンは12-13歳ぐらいの設定で子役を使う。
  • 挿絵的な描写で、巨人や壁の建設などの歴史、壁の破壊後の世界を描く。

それから、5年後。

調査兵団

  • まずは、カットインで、立体機動装置のアクションシーン。成長したエレン・ミカサ・アルミン他が、リヴァイの指揮下、ウォールローズ壁外の森の中にいる巨人を倒す。
  • その後、エレン・ミカサ・アルミン(+ジャン, サシャ)などが、新戦力として活動している姿を描く(原作・実写版では、新兵としての恐怖・不安さを描いているが、中堅戦力として「巨人やっつけたろ」的に元気よく前向きに!)。
  • なぜ主力戦力になってしまったか(死屍累々で先人達がいなくなってしまったから)や、ハンジによる立体機動装置・巨人の弱点の説明なども、ここのセクションで描く。
  • リヴァイの冷徹さと飛び抜けた強さは、ここで表現する。
シガンシナ区奪還作戦:
  • シガンシナ区奪還作戦(原作のトロスト区奪還作戦のエレン巨人を使わない版)で考えてみる。超大型巨人は、壁の壊し屋なので出番なし(残念)。
  • 穴の閉鎖は、巨人のエレンを使えないので、実写版の爆弾案を採用。
 
  • エルヴィン・ハンジ・リヴァイ(+α)による奪還作戦会議。
  • 元老院への承認を求める。
  • 出陣式(胸に手をあて「命を捧げよ」のシーンはここ)
  • シガンシナ区までは巨人を倒しながら、騎馬隊で一気に進軍(軍用トラックはダメでしょ)。ハンジ、嬉々として巨人退治を楽しむ変態ぶりを炸裂。
  • シガンシナ区到着。
  • リヴァイ・エレン・ミカサなど調査兵団の精鋭部隊で立体機動装置を使った人海戦術で爆薬をしかける計画。エルヴィンは後方支援。
  • 激しい戦闘シーン。攻撃のミスからアルミンが危機に。
  • エレン食われる。胃の中では、実写で胃の中を描くのではく、エレンの心象風景を描写する(母が殺される記憶が強烈に蘇る回想シーンの挿入など)。そして「一匹残らず、駆逐してやる」と繋げる。胃の中の描写は、漫画ではそれほどでもないけど、実写だとエグいです。
  • 巨人化後のエレンの描写は、原作・実写版とほぼ同等。
  • 巨人群との戦闘が終わリ、巨人エレンが力尽きる。
  • エレン巨人が消失し、エレンが無事にでてくる。あーよかったと、ミカサがエレンを抱きしめる(原作のまま)。
  • あれ?穴が閉じていない...orz

エピローグ:

  • エレン・ミカサと死屍累々の破壊された街。
  • 調査兵団の凱旋。王政の宮殿と民衆の歓喜
  • ...(現在公開できない妄想)...
  • そして、「オレ達の戦いはこれからだ!!!」と次なる戦いへ。おしまい。

「エレンが巨人化したのは何故?」という最大の疑問は、(後編なしの前提で)どうやって処理すればよいのだろうか? 漫画でも解明され始めるのはずーと後なので、実写版後編でも、どうやって処理するのか、興味あり。

 
ストーリーを描くのは難しいですね。
 

(追記) 

  • エレンの巨人化の謎は、プロローグで父か謎の注射を打つエピソードを入れれば解決できそう。バイオハザード的には、血の注射、でいいかな。エレンが巨人になる際に、注射のことを観客に思いださせるシーンを挿入すれば、要するにバイオハザードね、ってことで巨人に変身っていうのは納得するかな。 
  • 映画.comのレビューを読みました。賛否両論いろいろとありますね。私も基本的には出来が悪いという意見です。賛成側の意見の一つとして、ウルトラマンゴジラみたいな東映怪獣映画なんだから、そういう視点で観なきゃダメでしょ、というのがあって、なるほど、いい意見だと思いました。実写版は、進撃の巨人という舞台設定の元で、巨人のグロさを中心に特撮を見せるための映画と考えると納得です。特に巨人の映像表現は、洋モノのホラーやゾンビものの映画で観たことがない独特の映像表現で高く評価していいと思います(あーして欲しい、こーして欲しいとかは、ありますが)。レビューの中に、巨人が人を食うのがグロくてその後食事が出来んとか、もらいゲロしそうだった、と映画に悪い評価をしている人がいましたが、映像表現が良かったということですね(笑)。
進撃の巨人(1)

進撃の巨人(1)

 

 

 

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2015/9/9